箱は要りますか

達成の月の達成の日に箱売りの青年は現れた。
鉄筋のその箱は私達の夢をぎゅっと詰める素敵な箱で
ただの箱なのにそれを見ただけで
私達はうそみたいに幸せそうな未来を妄想してしまう不思議さ。
未来なんて神様の裁量一つでどうとでもなるのに。

実際、状況的に私達がその箱を買う理由はちょっとあやうい。
同居になるけどあるといえばあるし、家族といえる家族でもないから。
わかってながらでも、何にもないから、せめてせめて箱をって気持ちだけかも知れない。
そんな事は口にしなかったけど。
車に乗っている時、突然、だんなさんが言った。
「買う理由なんてお前の為だけだよ。お前が同居で苦労しなくて済むように」
嬉しいのか何なのかよくわからない気持ちだった。
どんな気持ちでそれを言ってるのか、口触りがいいから言っただけなのか、本気で言ってるのか私には分からなかったから
探るように あっそう?と言っただけだった。